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飲料分野におけるグローバルブランドとトルコローカル文化の融合

SAGAMİ

トルコの飲料分野における消費行動は、日本とは大きく異なる特徴があります。特に飲食に関して保守的な意識が強いトルコでは、消費行動を促すためにローカル製品の開発や、消費者意識に合わせた広告キャンペーンが不可欠です。では、グローバルブランドはどのような戦略でシェアを獲得しているのでしょうか。広告代理店の視点から、この夏の飲料市場と広告の動きをご紹介します。

炭酸飲料 ― 「赤いボトル」が家庭の記憶に

トルコの飲料文化を語るうえで欠かせないのが炭酸飲料です。AredaPiarの調査によれば、トルコ人の60.7%が食事と共に炭酸飲料を摂取し、そのうち53.2%がコーラを選択しています(2023年)。購入サイズで最も人気が高いのは2.5リットルボトル(24.7%)。大家族や来客を前提とした文化的背景を色濃く反映しています。

こうした習慣を踏まえ、コカコーラ社は断食祭や犠牲祭の直前に必ず広告を展開。大人数の食卓と中央に置かれた「赤いボトル」が繰り返し描かれます。日本人から見ればアメリカ文化の象徴である赤いボトルと、イスラーム宗教祭の大家族の食卓は対極的ですが、トルコでは違和感なく融合。単なる広告表現を超え、人々の「家族の記憶」の中に深く組み込まれています。

ウェルネス飲料 ― 健康志向と新規参入

コロナ禍以降の健康志向を背景に、砂糖不使用・低カロリー飲料やフレーバーウォーターが急成長しています。各ブランドはビタミン・ミネラル・プロバイオティクスを付加し、「美味しさ」と「健康」を両立させる製品を次々に投入。伝統的な食品メーカーに加え、老舗ビネガーブランドまでもが機能性清涼飲料市場に参入するなど、新たな競争が始まっています。

また、ヨーグルトやケフィアなど乳飲料文化が根付くトルコでは、主要牛乳ブランドがプロテインや鉄分強化のシリーズを発表。乳飲料にも機能性重視の波が広がっています。

コーヒー市場 ― スターバックスが牽引する多様化

トルコ文化を象徴する飲料であるコーヒーにも変化が現れています。Pulsideの調査では、82.7%のトルコ人が1日1杯以上のコーヒーを飲み、42.5%が2〜5杯を消費(2022年)。依然としてトルココーヒーが最多(54.7%)ですが、夏場にはアイスラテやコールドブリューの人気が急伸しています。

外資系コーヒーチェーンの進出も大きな要因です。特にスターバックスは、ヨーロッパで英国に次いで多い店舗数をトルコに展開(2023年時点で722店)。この数字はさらに増加しており、受容度の高さを物語ります。加えて、NEROやKahve Dünyası、Espressolabなど国内チェーンも急速に拡大。もともとチャイハネ文化として「飲み物を囲み、長く会話を楽しむ」習慣があるトルコにとって、コーヒーチェーンはおしゃれさと利便性を兼ね備えた新しい居場所となっています。

冷たいコーヒー市場も急速に成長中です。チェーンで購入する人は66.5%、スーパーで缶製品を買う人は48.3%(MarketingTürkiye, 2022)。過去7年間で市場は約6倍に拡大し、2023年には3億トルコリラ規模に到達しました。これにより「コーヒー=温かいもの」という固定観念が崩れ、缶飲料市場にコーヒーという新しいカテゴリーが創出されました。来年の夏、この分野でさらに新しい競争が生まれることが期待されます。

さらに個人的には、秋冬の飲料市場にも大きな動きがあるのではないかと見ています。それはホットコーヒーやホットティーです。現在のトルコでは缶飲料を温める棚が存在せず、「缶をホットで飲む」という発想自体がありません。しかし、缶の設計や販売環境を工夫すれば、ここには大きなマーケティングチャンスがあります。

これまでトルコの人々はチャイハネでカップに注ぎ、あるいはカフェチェーンの紙コップをテイクアウトして飲むのが一般的でした。しかしカフェチェーンの浸透とライフスタイルの変化を背景に、缶コーヒーを日常的に受け入れる素地が整いつつあります。今後ホット缶飲料という新しいカテゴリが開発されれば、トルコの飲料市場にさらなるダイナミックな変化をもたらすでしょう。

これまで飲食については「保守的で難しい市場」とされてきたトルコですが、グローバルブランドの進出とデジタルコミュニケーションの浸透により、特に若い世代では新しい製品への受容度が高まっています。購買力をつけていくこの世代に刺さる商品を届けることで、トルコで息の長いブランドを育てることが可能になるでしょう。

そして、この夏の動向を踏まえれば、来年の夏だけでなく、この秋冬にもどのような新しい飲料習慣が根付くのか、市場の展開がますます楽しみです。