SNS中毒な国トルコで、日本ブランドのマーケティング戦略を考える
公共交通機関の中でも、会議の最中でも、レジに並びながらでも。
いつでもどこでもスマホを手放さず画面を見つめ続けるトルコの人たちの姿に、戸惑いを覚えたことはないでしょうか。 私自身、トルコでインターネットとスマートフォンが一気に普及し始めた2010年代、オフィスでスタッフが勤務中に当たり前のようにFacebookやWhatsAppを開いている光景に、最初はどう受け止めたらいいのか悩んだ記憶があります。

「ネット中毒」な国?数字で見るトルコのネット事情
2024年のデータによると、トルコのインターネット利用率は86.5%。これは日本(86.2%)や世界平均(67.5%)を上回ります。 注目すべきは、その「使い方の濃さ」です。
インターネット利用時間:1日平均6時間57分(日本の約1.8倍)
SNS利用時間:1日平均2時間41分(日本の3倍以上)
SNS利用者率:インターネット利用者のうち94.2%がSNSも利用
利用プラットフォーム数:1人あたり平均7.5(世界平均6.8)
この数字だけでも、トルコの人々がいかにデジタルと共に生きているかが想像できるかと思います。
プラットフォーム別の利用状況を見ると、日本では、LINEが日常のやり取りの中心にあり、SNSといえばXやInstagramが情報共有や自己表現の場という棲み分けがあります。 一方トルコでは、WhatsAppがLINEのような存在としてコミュニケーションの基本ツールになっており、Instagramは情報収集から商品検索、自己表現までを担う“万能型”のプラットフォームとして使われています。

また、TikTokの月間平均利用時間は30時間39分に達し、日本(14時間44分)の2倍以上。最も低いXでも月に5時間以上です。
これだけの時間を、縦横無尽にSNSを行き来しながら過ごしている――そんなユーザーに向けて、どのプラットフォームで、どんな言葉で語りかけるのか。これは、マーケティングにおける重要な問いです。

「とりあえずTikTokで」の前に
最近、トルコのローカルスタッフ―特にマーケティング担当者の方々から、「とにかくTikTokが盛り上がっているから、まずアカウントを開設したい」というご相談を受けることが増えてきました。
確かにTikTokは、認知拡大において非常にパワフルなツールです。
しかし同時に、私はこうした場面で「少し立ち止まって考える時間」をご提案するようにしています。
TikTokは動画限定のプラットフォームであり、静止画やテキストは通用しません。撮影や編集が不可欠で、コンテンツの量・質ともに一定のリソースが必要です。
また、コンテンツの消費スピードが他のSNSと比べて非常に早いため、継続的な更新コストも考慮しなくてはなりません。 また、TikTokは「バズる」には強いけれど、それが必ずしも「買う」や「ファン化」につながるわけではない。
こうした点も、見落とされがちです。
数字と現場の間で、立ち止まる視点
ローカルスタッフの皆さんがTikTokを推す背景には、内部報告上の都合──「バズした」「ビュー数が出た」といった、上層部に報告しやすい成果が得られるという組織的な事情もあるのかもしれません。
一方で、日本側からすると、「それって本当に成果なのか?」と疑問を感じつつも、現地スタッフの感覚や主張にどう応じるべきか、または実際の効果をどう精査するべきか、悩まれる場面もあるかと思います。
トルコでインターネットが普及する前からこの国に暮らし、さまざまな日本ブランドの広告運用に携わってきた私の実感としては、プラットフォームの特性とブランドのフェーズが噛み合ったときにこそ、結果が生まれるということです。
プラットフォームの流行や数値だけに振り回されるのではなく、
今のブランドがどこにいるのか
誰に、どんなトーンで伝えるのがふさわしいのか
そして、それに最も適したメディアはどれなのか
こうした問いを一度、丁寧に見つめ直すことが、トルコという情報飽和社会でブランドを確立していくための鍵になるのではないかと思います。
